NHKスペシャル 新シルクロード 第8集 カラホト 砂に消えた西夏

西夏文字が既に一部は解析され、西夏文書の解読が進んでいるとのことでした。井上 靖の「敦厚」では謎の文字でしたし、シルクロードでも未だ謎のままでした。時代が進み、1つ1つと事実がわかってくるのですね。こういう情報に接すると、人類も捨てたものではないと思ってしまいます。
 黒水城カラホトは黒河のほとりにあって西夏の西の境を守る砦でした。その後、元の時代になると、草原の道の重要な拠点として陶磁器の道としても機能していました。陶磁器の最高傑作の1つである「元染め付け」は、正にペルシャのコバルトと中国の磁器の結びついた交流の産物だったのです。この緑のオアシス都市は、その後黒河の流れがへり、600年前突然の砂漠化によって埋もれてします。元は220万平方km?の耕作地に囲まれていたことが分かっており、水路跡も残っています。ところが、14世紀後半から枯れ出して来ました。実はこの時期は小氷期に入っていたのです。気温が低くなり、氷河が溶けにくくなったため河へは十分な水が流れなくなりました。そして、明太祖は1372年に黒河に堰を築きカラホトを滅ぼしました。遺跡はそのまま砂に埋もれていったのです。
 いま黒河のほとりの人口15,000人?の都市エチナが砂漠化に襲われています。100年前ヘディンがこの世の楽園と呼んだ胡揚と緑に満ちたこの町も、黒河の水が減ってきたため、半世紀で緑の土地の1/4が減りました。これが黄砂の原因になり、日本にまで影響しているのです。
 今回の原因は小氷期ではありません。砂漠を沃野に変えようと黒河の中流域にダムや取水堰が100以上作られました。実にこの地帯で黒河の94%の水が使われているのです。耕作地が3倍に増え、トウモロコシ等の大穀倉地帯になりましたが、網の目のような用水路は蒸発することはあっても地下に染みこんで水脈を作ることはなくなりました。また、黒河下流へは年1度の放水しかなくなったのです。
 300年続いたソゴノール村のモンゴル系トルムート族の放牧も、残された緑を守るために強制的にやめさせられ、家畜を売って町に移住してゆきます。こうして人類の生息地の1つの拠点が失われてゆきます。
 やはりこれからは「水」こそが一番の戦略品になるのでしょうね。