耳をすませば

何度目かな、でもそのたびに感動しているから世話がない。等身大で、そうだった自分もそんなときがあったのだと思い入れがあるのです。年を取ると、ついついノスタルジアの世界が心地よくなるのですが、それだけではないと信じています。劇的なことなんて何もない、中学生の夏から冬までの物語。でも作りが丁寧で、絵柄も本当にちょっと前の時代を切り取っていてその点でも心地よいのです。
 原作も持ってますが、やはり少女漫画の範囲にとどまっているように思います。ジブリの方はもっと普遍的になっています。そこが気に入らない人もいると思いますが、あの完成度はすごいと思います。というのも、挿入されている「イバラードの世界」とのマッチングが非常に自然に感じられるからです。日常生活だけだとちょっとだれるかなというところにあの幻想的な世界が興味を引きます。できればそっちだけで一つの作品を完成させてくれないかな。
 中学から高校生時代に何かを成し遂げることで自信を付け、自分を確立したいものだと思っていました。対人赤面症で、あがり症で、人前では足ががたがたになって頭の中が真っ白になってしまうのがイヤで仕方がありませんでした。自分なんて何の取り柄もない、取り替えの効くいなくなっても気づかれないものと感じてました。何かに挑戦しては途中で挫折することの繰り返しでした。それが臆面もなく人前で話せるようになったのはいつからでしょうか。少なくとも30才近くまでは大勢の前で話をすることは苦痛で、足が震えたものでした。20才を超えると人なんてなかなか変われるものではないと思っていたのですが、ふりかえってみると不思議ですね。学生時代の自分には想像もできないでしょうね。といって理想に近くなっているとも思えません。いってみれば大人のずるさを身につけただけなのかもしれません。だから「耳をすませば」に感動するのかな?