「そのとき歴史が動いたSP」を見て

 昨日再放送された「そのとき歴史が動いたSP」の織田信長を見ていて先日読了した「洋泉社新書y086 鉄砲隊と騎馬軍団 真説・長篠合戦 鈴木眞哉」を思い返しました。
 本当に長篠合戦は世界史に残る「戦術革命」がったのだろうか?だいたい、武田の騎馬軍団は本当に存在したのだろうか?信長の鉄砲隊は整然と3段撃ちが出来るほど訓練されていたのだろうか?著者は、そういった面から「史実」を検証して、実際は野戦築城された柵に対する攻城戦で信長自身がその前方の価値を自覚していなかったと結論しています。
 いわれてみれば確かに、長篠合戦以降戦争の形態が変わったということはないし、川中島の合戦には武田の騎馬軍団は出てきていません。いわゆる騎馬兵の集団戦が日本にあったかといわれると、それこそ義経鵯越くらいしか思い浮かびません。騎馬といえばそれなりの士で、その周りをいわゆる一族郎党が守るという形の戦術単位が当たり前であった時代になぜ長篠だけが騎馬兵の突進対馬防柵という戦いが生まれたかったのでしょう。それは、江戸時代初期の小瀬甫庵信長記が元になっているそうです。それを明治以降の陸軍が誤解して現在の三段撃ち物語を定着させたというわけです。
 とするとNHKも罪なことをします。個人的には司馬遼太郎の「国盗り物語」などに活写された信長の時代を超越した個性と発想そして実行力には圧倒されて、いかにもありそうなものとして疑いを持ちませんでした。そんな信長像には今でもあこがれを持っていますが、事実は違うのでしょうね。彼もまた時代の子で、全くの近代人ということでとなかったのでしょう。