プロジェクトX 地下鉄サリン事件 救急医療チーム 最後の決断 

今回は地下鉄サリン事件聖路加国際病院の対応でした。聖路加国際病院はまだ行ったことはありません。非常に立派な建物で、裏にホテルを増設したようなことを聞いたように思います。医療に対して明確なポリシーがあってそのために設備の面でもいろいろと手を打っていることが分かります。残念ながら、国家としての全国的な病院戦略は難しいようですが。ここに勤めておられるDrと仕事の関係で何度かお会いしたことがありますが、非常に真面目な方々でした。
 最近は病院を新設する際、玄関ホールなどに余裕を持たせ、非常時に病室としての機能も果たせるような配慮がされつつあるそうですが、ここはその辺の戦略が明確だってのですね。おかげでサリン事件ではあれだけの被害者を受け入れることができました。そしてその裏には日野原院長の明確な意志がありました。外来を断って全力を対応に向けるという決心ができるのも戦争を経験してきたゆえんでしょうか。こういったリーダーはまだまだ日本には数多くいるはずだと思うのですが、肝心の時に一番大事な所にいないのが今の日本の不幸なのでしょうね。
 今回のポイントは解毒剤のPAMを使うかどうかだったようです。あれだけの被害者がいて、一刻を争う人が次々と出てくる状態で、その原因として有機リン系の毒物が考えられ、松本事件からサリンが疑われていたのだったら、たとえサリンでなかったため最初治療された被害者がPAMの副作用で死ぬようなことがあったとしても、まず使ってみるという選択もあったのではないかと思います。多分、野戦病院であったらまずそうしていたと思います。時間が勝負で、一人でも助けるためには、たとえ何人かが死ぬことがあっても躊躇している暇に情報を得るために積極的に治療する事を選択するはずです。一人の患者を診る通常の治療と戦争や事故、災害などのような場合の大きな違いがそこにあるはずです。少なくともPAMの効果で毒物の種類を推定することができ、残りの治療に役立てることができるからです。そして、日本の今の教育ではその点が弱いように思います。命が等しく重いと言って手をこまねいて考えていることが許されない決断の場で適切に対応できるためには経験と訓練が欠かせないと思います。
 対応した方々の英雄的な活動と努力に対しては頭が下がりますが、この経験が次に活かせるような対策造りが何処までできているのかが気になります。この国に危機管理と言うことがきちんと根付くのでしょうか?部分部分では世界水準を超えるような対策が取られ、プロが育っていても全体として一番大切なところが何か、そしてそのためにどうするのかがいつも後回しになったまま、次に来る別の形の危機に飲み込まれて行く、そのような繰り返しでゆくなでしょうかね。
 また、だらだらとして文章になってしまいました。いろいろと批判的に言っては見るものの、肝心の自分自身がまさに日本人の典型だと思ってます。   (00:40)
 再放送を見て、抜けていたところと誤字を直しました。(2005/02/10 01:15)